COOLLの開発

COOLLとは

COOLLは、コンピュータやウェブサイトなどのICT(Information and Communication Technology)を用いた英語教育システムです。YouTubeなどのオンラインビデオ共有サービスを始め、メールやチャット、通信手段の発達により、英語使用は即効性を持つようになりました。COOLLでは、専門課程の学生が自分の興味に従って動画やテキストを利用し、英語を学ぶ仕組みを作る試みをしています。情報科学、多文化・国際協力、言語教育など専門領域の素材であるビデオやテキストをアップロードし、その素材に日英の字幕を施すことにより、スピードのある自然な英語に慣れない学生でも、生の素材にアクセスできるように工夫しています。また、MoodleやHot Potatoesといった英語教材作成技術を使って、練習問題や語彙学習の場を設け、より深く教材を扱うことができるようにしています。

開発の背景

大学の専門課程で求められている英語とは

実際に役に立つ英語能力を身に付けるには、読む、書く、話す、聴くの4つのスキルに重点を置いたスキル重視の英語教育に加え、英語学習を通して内容についても学べる、内容重視の英語教育が必要であると考えられています。内容重視の英語教育のためには、学習者の興味や関心、さらには勉強中、研究中の内容に即した題材を用いる必要があります。近年では、学習者の興味を引き付けるものとして、ウェブ上に大量の動画やテキストがあり、COOLLではこれらを利用して成果をあげる工夫をしています。COOLLによって、幅広い専門分野に対応できる、内容重視の英語教育向けの英語教材を作成することができます。

津田塾大学での事情

津田塾大学は小規模なリベラルアーツの大学であるため、英文学や英語学に限らず、国際関係学、数学、情報科学と幅広い分野にわたる教材を必要としています。COOLLを開発することにより内容重視の英語教育を強化し、COOLLを大学専門課程レベルの英語教材に関する情報をまとめて入手できるようなシステムに育てたいと考えています。

協調の必要性

内容重視の英語教育の教材に求められる条件は、内容が専門分野と関わっていること、様々な形式の授業ができることです。内容重視の英語教育では、決まった形式の授業があるのではなく、学生の英語のレベルに合わせて、様々な形式の授業をする必要があります。そのような条件に合った教材をつくるためには、専門分野の教員と、英語教育の専門家が協調を進めることが重要であると考え、COOLL(COllaborative Open Language Learning)が開発されました。Collaborativeの部分には、協調する様々な人、専門分野、英語教育関係者が役割分担し、参加する意味合いが込められています。Open の部分には、オンラインビデオなどオープンなコンテンツと、オープンソースソフトウェアを利用するという意味合いが込められています。例えば、あるテーマに関わるビデオを専門教員が推薦し、英語教員がその中から英語の授業に利用するビデオを選ぶ、選ばれなかったビデオも参考資料として利用可能にするという作業を簡単にしたいと考えました。また、素材や教材は教師が用意するのではなく、学生やその他の利用者、参加者が自由にアップロードし、相互に利用し合うことができるのがCOOLLの特徴です。

COOLLの設計方針

COOLLは次の3つの方針で設計されました。

  • a) オープンソースソフトウェアの利用
  • b) オープンコンテンツの利用
  • c) 多様で、幅広いユーザ参加

a)については、標準的なオープンソース環境であるLAMP(Linux、Apache、MySQL、PHP)での開発とし、とくに、eラーニング教材としての練習問題の提供には、Moodle を利用しています。b)のオープンコンテンツの利用という方針では、Web上のオンラインビデオを積極的に利用することを目指しています。ビデオ教材やそれに付随する様々な教材は、教員個人はもとより大学でも開発が困難です。オープンコンテンツを利用することにより、多様で幅広い教材の提供ができるようになります。教材は、英語教員だけでなく、様々なユーザから提供・レビューされることにより、品質が向上します。COOLLでは、このような効果を期待してc)の方針を掲げています。

素材教材

COOLLでは、Web 上に公開されているビデオデータ、音声データ、Webページなど、URLで特定できる任意のリソースを「素材」(source material)と呼びます。素材はCOOLLのユーザが誰でもURLとその解説を公開することができ、ソーシャルブックマークとしての機能を備えています。素材の中から、ユーザのレビュー等により専門課程の英語教材として優れていると判断されたものについては「教材」として採用されます。教材はビデオに対して字幕や練習問題等を追加して、より学びやすい形として公開されます。COOLLでは、英語字幕を見ながらビデオが見られる他、文単位で同じ箇所が繰り返して見られるようになっています。また、日本語字幕があれば、日本語字幕も見ることができます

素材教材に分ける理由は、知的財産情報の管理のためです。素材はWeb上に公開されているコンテンツへのリンクであるので、誰もが自由に作成できます。著作権等がクリアになっているものに関しては、教材としてCOOLL内に取り込み、利用することができます。この作業は、誰でもができるわけではなく、権限をもった一部のユーザに制限されています。このように分けることにより、知的財産権の見通しが容易になります。

利用状況

COOLL の実装は2008年度に開始し、2009年度から運用を始めました。2010 年度はより多くの科目で利用し、秋からは学外に公開する予定です。学外公開で一般の参加者が加わることにより、更に内容が充実すると期待しています。

これからのCOOLL

COOLLでの英語教材開発には、次のような課題があり、言語処理技術のさまざまな応用が期待されています。

  • ・ビデオ教材の難易度の推定
  • ・集合知を利用した、教材、素材の推薦機能
  • ・字幕やスクリプトを利用した練習問題の自動生成

COOLL は、基本的な機能をようやく提供したところで、これから、言語処理技術をはじめ、教育工学、音声処理を利用した機能を研究、開発していく予定です。また、字幕、練習問題データの標準化、WebサービスAPIの実現など、広く利用されるサービスを目指し進んでいきます。